夢の直中。
「千夜千冊」は松岡先生にとって旅のようなものであったと伺いました。4年に渡って続
けられたグランドツアー。それはまさに、人知の大陸を横断するが如きものであったこと
でしょう。
先生が旅路で覗かれたその窓、その路地に、一つの棚としてどのような舞台を供するべき
か、また、その森や都市や山脈には、棚の集積としてどのような仕組みで迎えるべきか、
壮大な構想に、私はデザイナーとして重い責務と深い幸運とを感じつつ「千夜千冊」後半
の三分の一をお供させて頂きながら、考えて参りました。
------単に思考の軌跡を枝状の繋がりや展開で類比、再現するよりも、知を抱いた棚自身が
相互に作用し得る幾重もの様相をつくり出し、環境を再構築すること。拠って、そこに新
たな関係性を生み、新たな思考を沸き起こし、そこからまた新たな旅に発てるようなもの
に成るように------。
縁が縁を呼ぶ、不思議な道程でもありました。そもそもこの機会に巡り会わせて下さった
北山さん、牧浦さんは勿論、無二の製作チームとの出会いは、ビス一本まで妥協なく相応
しい素材とカタチを求めることを可能としました。結果「棚」は棚であることを超え「千
夜千冊」の為の小さな宇宙に昇華して、ついに「燦架」という眩し過ぎるような銘まで頂
戴するに至ったのです。
一つの山を超えて、今、我々が目指すべき次の大きな山が見えています。「燦架」には、
集合茲積の遺伝子を組みました。一架はそれぞれ独立した存在でありながら「千夜千冊」
全体を体現する超部分でもあり、故に「千架の分有」に、いつか来る「千架の合体」を想
うのです。
近い未来、一堂に会した「燦架」によって「千夜千冊」の無尽蔵の可能性から、未掘の価
値が結構する様を見届けたい------。
夢中の道、旅はつづきます。